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インタビュー
表情や仕草にも注目し、依頼者の真のニーズを見極める
事務所設立の経緯を教えてください。
弁護士登録後、日本国内の法律事務所で2年半ほど勤務してからアメリカのロースクールに留学しました。海外企業との国際取引の仕事に興味があり、より専門的に学びたいと思ったのです。
現地の法律事務所で実務経験も積み、たくさんの刺激をもらって帰国しました。その後、1989年に現在の事務所を設立したという次第です。
事務所の理念や、事務所を運営する上で大切にしていることはありますか。
依頼者のニーズに応えることです。依頼者がどういう解決を望んでいるのかを十分に理解し、実現に向けて尽力することが私の役割です。様々な要望に柔軟に対応できるよう、常に最新の法改正や裁判例をリサーチしています。どれほど経験を積んでも、日々の情報収集は怠りません。
依頼者と接する際に気を付けていることはありますか。
表情と仕草をよく見ることです。たとえば、不安そうにうつむく、疲れたようにぼんやりする、焦って何度も瞬きを繰り返すといった仕草は、発する言葉以上にその人の心理状態を雄弁に物語っています。
そもそも、思っていることを言葉で正確に説明できる人は少ないというのが私の考えです。人は誰しもうまく言葉にできない感情があり、それが意図せず表情や身振り手振りに表れます。言外のサインを見逃さず、依頼者の気持ちをしっかり汲むようにしています。
事件によっては、依頼者と直接会うことなく、電話やメールのやりとりだけで完結するケースもあります。ただ、できれば一度は顔を見て打ち合わせをしたいというのが当事務所のこだわりです。
依頼者の住まいが遠方であるとか、諸事情によりなかなか事務所に来られないといった場合は別ですが、そうでなければなるべく対面で話す機会を設けます。それほど、会って話すことで得られる情報は貴重なのです。
国内外の離婚案件に対応
前田先生は、国際離婚を積極的に取り扱っているそうですが、具体的にはどういった事例があるのでしょうか。
件数として最も多いのは、日本国籍を持つ妻あるいは夫が日本で暮らし、外国籍を持つ妻あるいは夫が日本国外で暮らす夫婦の離婚です。日本在住者側、国外在住者側いずれからの依頼も承ります。当事務所では英語対応が可能ですので、依頼者や相手方が英語しか話せない場合でも、通訳を介さず直接コミュニケーションを取ることができます。
もちろん、国内の離婚事件も扱っています。件数としては、国際離婚:国内離婚が6:4くらいの割合です。
国内離婚・国際離婚に共通して、離婚事件全般に取り組む時に心掛けていることはありますか。
依頼者に対して、事件の解決方針、現在の状況、取り得る選択肢などを丁寧に説明することです。特に、依頼者が現在暮らしている国以外の法律について説明するときは、より一層の細やかさを意識しています。
依頼者の納得を得た上で対応を進められるよう、じっくり時間をかけて対話することを心がけています。
離婚事件を弁護士に依頼することには、どんなメリットがあるのでしょうか。
全員が必ずしもそうというわけではありませんが、離婚事件の依頼者は、それまで当事者間で何度も話し合いを重ねたけれどうまくいかず、心身共に疲労困憊している方が多いと感じます。
相手方とのやりとりや手続き、書面作成などを弁護士に任せることで、依頼者の内面に余裕や安らぎが生まれます。これが何よりも大きなメリットだと思います。
未成年の子がいる夫婦の離婚において、注意していることはありますか。
面接交渉(離婚後、あるいは離婚手続き中に、子どもと離れて暮らす親が定期的に子どもと会ったり手紙を送り合ったりして過ごすこと)の条件を慎重に取り決めることです。
面接交渉は子どもの健やかな成長のためにおこないます。たとえ親同士が不仲で別居や離婚を選んでも、子どもが、離れて暮らす方と関わり続けたいと思い、虐待等の懸念がないのであれば、同居中の親が面接交渉を妨げてはいけません。
スムーズに面接交渉を実施するためには、離れて暮らす親が子どもと会う頻度や場所などの条件設定が重要です。父親、母親、場合によっては子ども本人の意見も聞きながら、当事者が納得できる条件を根気よく探っていきます。
離婚事件の中でも、特に気を付けて取り組みたい部分ですね。
そうですね。また、私の感覚ですが、子どもと過ごす時間や子どもの福祉を重視する度合いは日本より海外のほうが強いと感じます。
以前受任した事件で、アメリカで国際結婚した日本人女性が離婚を希望し、子どもを連れて日本に一時帰国したところ、ハーグ条約(国境を越えた子どもの不法な連れ去りに対応するための仕組みについて定めた条約)に違反するとして逮捕されてしまったことがありました。最終的には司法取引によって釈放されましたが、大変な事件でした。
国内外問わず、子どもを巡る離婚トラブルには独特の難しさがあります。じっくりと腰を据えて取り組まなければと留意しています。
最善の解決の形は夫婦ごとに異なる
前田先生の事務所では、初回の法律相談はどのような流れで進んでいくのでしょうか。
国内離婚の場合は、まず事務所で相談概要のヒアリングをします。もしお手元に何かしらの資料があれば持参してください。例を挙げますと、DV被害によって怪我をした際の診断書、興信所や探偵に依頼して揃えた浮気の証拠写真などですね。
ヒアリングした内容を踏まえて見通しを立て、その方の意向を実現するために必要な対応や、弁護士が提供できるサポートの内容などを説明します。私の方針などを踏まえて、依頼するかどうかをご検討いただきます。
国際離婚で、なおかつ日本国外から相談していただく場合は、電話やメールでこれまでの経緯を聞き、依頼者の手元にある関連書類一式を郵送あるいはPDFで送ってもらって見通しを立てるという流れになります。
現在、離婚に関して悩んでいる方や、弁護士への相談を検討している方に向けてメッセージをお願いします。
弁護士に相談するタイミングについて迷う方は多いです。弁護士に頼るのは大袈裟かな、まだ自分たちだけで粘ってみようかなと逡巡するだけでもストレスがたまると思います。
見極めが非常に難しいですが、当事者同士がお互い顔も見たくない程に関係がこじれてしまってからではなく、それよりも早い段階で一度弁護士にご相談いただければと思います。第三者を間に入れて気持ちを冷静に伝え合うことで、状況が改善するパターンもあります。離婚を回避できたり、時間やコストをかけずに問題を解決できたりするかもしれません。
必ずしも離婚することだけがゴールではなく、最善の解決の形は夫婦ごとに異なると思っています。ご自身の今後の人生や子どもの幸せなど、様々な視点に立って、一番いい解決方法を考えていきましょう。お気軽にご相談ください。